デケェ(ささや)き声

投稿日:

 あれはたしか、定年で自衛隊を()める1年くらい前、最終ポストの、情報セキュリティや守秘の責任室長(情報保証・保全室長)をしていた頃のことだったか。新コロの猖獗(しょうけつ)っぷりたるや、もはや最大火力と言ってよいほどの猛威を極めていたが、紙の秘密文書を(つかさど)らなければならない仕事の特性上、テレワークへのシフトが難しく、私はガラ空きになってしまった通勤電車で毎朝毎晩、自宅から市ヶ谷まで通勤していた。

 その日、私は早めに仕事を切り上げ帰りの電車の中の人となった。都心から北千住に向かう日比谷線は三ノ輪と南千住の間で地上に出る。次第次第に陽永(ひなが)となる心地よさ、暮れ(なず)んでいる黄色い光の中を電車はのんびりと走っ “デケェ(ささや)き声” の続きを読む

変人落想

投稿日:

 このところ、よくアニメや漫画を見たり読んだりするようになった。若い頃は活字だけでなく漫画もよく読んでいたが、ここ数十年は活字にばかり親しんでいたので、60歳を前にしてまたずいぶん変わったものだと我ながら思う。

 アニメや漫画は楽しい。

 このところ楽しんでいるのは、「異世界おじさん」「葬送のフリーレン」「薬屋のひとりごと」だ。「薬屋のひとりごと」は単行本は買っていないが、「異世界おじさん」と「葬送のフリーレン」は単行本も全部買って読んだ。

 これら3作品のうち、「異世界おじさん」と「葬送のフリーレン」には、「旅」が共通項としてあるが、「薬屋のひとりごと」に旅の要素はない。他方、これら3作品に共通しているのは、いずれも「主人公が相当な変人 “変人落想” の続きを読む

給料一件顛末(てんまつ)

投稿日:

 今の会社に雇い入れて貰ったときに給料の相談をした。

 会長は私が提出した当時の源泉徴収票などを仔細に検分し、「あなたが今貰っている程度までなら払える」と言った。が、私はあべこべに、慌ててこれを辞退し、「その半分でお願いします」と値切ってのけたものだ。これを私は、前代未聞の珍事だと評価している。給料を貰う側が値切るなんて、実際珍事だろう。

 会長も耳を疑ったようで、「ハァ?!何を言ってる。……どういうことだ」と尋ね返してきた。

 これには理由がある。自衛官は “給料一件顛末(てんまつ)” の続きを読む

自衛隊の戦い

投稿日:

 私は自衛隊にいた40年もの間、()(フタ)もない端的な言い方をすれば、人殺しの仕方を一貫して鍛え続けていたわけであるが、どの自衛官もそうであるように、それによって人を殺したことはない。

 だがしかし、そうやって対人戦を鍛え続ける一方で、自衛隊は常に人ではない他の何かと戦っていて、今もそれは続いている。

 思いつくまま挙げれば「ウイルスとの戦い」「牛との戦い」「鶏との戦い」「トドとの戦い」「鹿との戦い」 “自衛隊の戦い” の続きを読む

苦役

投稿日:

 10年前はこんなことをシレッと書いていた。当時47歳だったが、毎日毎日この調子だった。去年自衛隊を定年退官したので、もうこんなことをする義務はない。苦役から解放され、実に晴れ晴れとした気持ちだ。

 苦役。そう、苦役である。

 往時内閣法制局長は “苦役” の続きを読む

漫画及びアニメ「異世界おじさん」と私

投稿日:

 標記「異世界おじさん」。面白くて、何度も読み返し、アニメも全部見た。

 連載開始は5年前の6月から、単行本の1巻は同じく11月、アニメの放映は今年の春までだったから、流行からは少し遅れて楽しんでいることになる。

 とはいうものの、私がこの漫画を知ったのは令和元年(2019)頃のことで、割と早くから注目してはいた。最寄の旭屋書店にフラッと立ち寄った際、「立ち読みお試し」で第1巻の半分くらいに減らしたものが書棚に吊るされていた。それを読んでとても面白かったので、以来ずっと全部読みたいものだと思っていたのだ。

 その後、この漫画を読みたい読みたいと思いながら読まずにうち過ぎてしまった。これほどの大ヒットになったり、アニメ化されたりしていたことは全然知らなかった。単純に忙しかったからだ。

 私は令和4年(2022)に40年間勤めた自衛隊を定年退官して会社員に “漫画及びアニメ「異世界おじさん」と私” の続きを読む

妄想・老人自衛官

投稿日:

 防衛力の増強を打ち出した政権は人材確保のため自衛官の採用可能年齢の上限を撤廃する法律改正を行った。これで、法理上は90歳でも100歳でも自衛官として採用できるようになった。

 意外にも、将来に希望の持てぬ老人達が志願に殺到してきた。防衛省としては定年で退職した元自衛官の志願を内心目論(もくろ)んでいたのだが、思いのほか一般の定年退職老人たちまでもが群れをなして志願票を投函してきた。

 老人たちの心中はといえば、これは単純な愛国心や義勇ではなかった。5倍に増えた防衛費を背景とする1千万円の年俸と死亡時の償恤(しょうじゅつ)金1億円は、老い先短い者にとって死亡保険金代わりの家族への遺産と見れば魅力という他なかったのである。しかも、用無し老人として家族から嫌われながら余生を送るより、いっそ戦争に行って射殺でもされたなら「じぃじはあなたたちのために命をかけて戦って死んでくれたのよ(泣)」などと、日頃冷たい息子の嫁が涙ながらに孫に語るかもしれないではないか。とどのつまり、言うならば、「(うと)んじられて百歳の天寿を全うするよりもいっそのこと戦死した方がマシ」という身も蓋もない自暴自棄である。

 そんな折も折、遂に発動されたのが樺太(からふと) “妄想・老人自衛官” の続きを読む

自衛隊の思い出の一つ「(まく)()り」

投稿日:

膜張り 「(まく)()り」というのは「靴の鏡面磨き」のことだ。残念ながら千葉の「幕張(まくはり)」のことではない。

 雑貨や身の回りの手入れに(こだわ)りのある方なら、この「鏡面磨き」という一言でどういうことかわかると思う。

 御存じない方に説明すると “自衛隊の思い出の一つ「(まく)()り」” の続きを読む

私FAQ

投稿日:

 自衛隊を定年退官するよりもかなり前、日本ITストラテジスト協会に入ったところ、一般の会社の方々にかなり知り合いが増えた。今は日本ITストラテジスト協会も辞めてしまっているが、入会した当時、私にとっては刺激が多く、とても勉強になった。

 反面、自衛隊のことで質問攻めにあうようにもなった。自衛隊は不思議な組織で、一般の人にはなんだかよくわからず、しかも “私FAQ” の続きを読む

雑感日常

投稿日:
背広やクリーニングや

 会社員になったので、毎日背広を着るようになった。

 会社員になる直前は、「背広を毎週クリーニングしてたらお金がかかってしょうがなくなるのではないか」などと要らぬ心配をしていたのだが、入社する前、イオンの背広売り場へ勤め用の背広を買いにいくと、「ウォッシャブル」の背広がたくさん売られており、それを買ったので、自宅で洗濯ネットに入れて洗えばよく、心配するほどのことはないことがわかった。

 これまでいた自衛隊では “雑感日常” の続きを読む